香彩七色~香りの秘密に耳を澄まして~
「香彩七色~香りの秘密に耳を澄まして~」浅葉なつ
<https://www.amazon.co.jp/dp/B00PFMHHTK/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1>
“犬並みの嗅覚を持ちながら今までその能力を美味しいものを食べることにしか使ってこなかった秋山結月。
そんな彼女が大学で出会ったのは、古今東西の香りに精通する香道宗家跡取り・神門千尋(家出中)だった。
人嫌いの千尋に邪険にされつつも、結月は次第に新しい世界に魅了されていく。今まで意識しなかった様々な香りに耳を傾けると、彼らは何より饒舌に秘密を語っていた。
人々が香りに託した様々な想いを読み解いていく、ほのかなアロマミステリー”
<勝手にこんな人にオススメ>
○メディアワークスの本が好きな人
○見えないものを言葉で表現するのが好きな人
○香道という新しい世界を楽しく知りたい人
作者は、浅葉なつさんです。かわいいきつねと魅力的な神様が特徴的な「神様の御用人」シリーズの作者ですね。ただ、この香彩七色は2013年の作品なので神様の御用人より前にかかれたことになりますね。
御用人もそうですが、ビブリア古書堂やタレーランのようなこれぞメディアワークス文庫!といった内容なので誰でも面白く読めると思います。
ただ今回のフォーカスはやっぱりなんといっても香道です。
ところで香道とは何かというと
「香道は、書道や華道、茶道と同じ芸道であり、一定の作法の下香木を焚いて、その香りを鑑賞する芸事だ」
だそうです。
香道では香りをかぐことを「香りを聞く」というのだそうです!なんてオシャレな響き!
耳を澄ます…ではなく鼻を研ぎ澄ませるということですね。この五感の動詞を別に当てはめるって面白い表現だなと思いました。
主人公の結月は鼻がひたすらに良い快活で魅力的な女の子です。
そんな彼女が無口で無愛想だけど博識で頼りになる名門香道家の息子、千尋と出会ってなんやかんや謎を解き明かしていくというストーリーなわけですが、この香道の説明に関して、結月という素人の立場を介して読者は知ることが出来るので、わかりやすい印象を受けました。
ってか面白い!こういうのはやっぱ平安の幽玄な世界だなぁと思います。
においというものを結月が素人なりにできるだけ表現している感じは、実際に嗅いではなくてもなんとなくわかる気持ちにさせられました。言葉の表現力って大事ですよね。
文学少女シリーズで、遠子先輩が名著を食べて味として事細かに表現していたのをなんとなく思い出しました。
小説の中では3つの章がありますが、そのなかでも僕は一つ目の章がお気に入りです。
結月の男友達、啓太の亡くなった幼馴染に関する話です。
香りに関する話からこういった謎解きが生まれるのかと驚くと同時に、幼馴染の生前の想いが明らかになっていき段々、あぁぁあぁという気持ちになりました。すごく良かった。
伏線にしても、トリック?にしても良くできていますし、この一章の話を大きく膨らませれば、普通に一本映画撮れると思うくらいのストーリー構成だと自分では思ってます。いつかやらないかなぁ。。。
僕自身が大学院の研究において当初においに関して興味を持っていたため、香りに関する小説というだけでもうヒットでした。
未知の分野を知れて面白かったし自分自身も一度「香りを聞く」体験をしてみたいと感じました。
嗅覚は五感で唯一視床を経由しないで直接脳の辺縁系まで達するから、他感覚と比べても無意識に記憶に残るとかも聞いたことありますし、いつかこの手の内容にもしっかり手を出せるようになりたいものです。。。