夜空の呪いに色はない
「夜空の呪いに色はない」河野裕
(2018年3月1日初版発行 新潮文庫nex)
<https://www.amazon.co.jp/dp/B07B49P3RZ/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1>
あらすじ
かつて子どもだった すべての大人たちへ
郵便配達人・時任は、階段島での生活を気に入っていた。手紙を受け取り、カブに乗って、届ける。七草や堀を応援しつつも、積極的に島の問題には関わらない。だが一方で、彼女は心の奥底に、ある傷を抱えていた……。大地を現実に戻すべく、決意を固める真辺。突き刺さるトクメ先生の言葉。魔女の呪いとは何か。大人になる中で僕らは何を失うのか。心を穿つ青春ミステリ、第五段。
こんな人におすすめ
〇是非、階段島シリーズ全部読んでください。頼みます。笑
とうとうここまで来た階段島シリーズの5冊目。
二巻目を買ってからここまで一週間でばーっと一気読みしていたので、もう自分の世界観が階段島にもってかれてしまっています。笑
次の一冊で完結だからこそ、しっかりまた向き合いたい。。。
以下ネタバレを含むことになると思うので未読の方はご注意ください。
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この本を読み始めて僕が思ったのは、「動き始めたな」ということでした。
何を最終巻直前でいまさらと思うかもしれませんが、ここにきて主要以外の登場人物の思惑が入り交じりこの階段島という楽園?の在り方が多角的に見えてきたなと感じたのです。
そしてそれらを通して一つ確信を持ったのですが、それは、この本は何かをひたすら「比較」し続ける話なんだなということです。
「捨てなかった自分」と「捨てられた自分」
「現実」と「階段島」
「好き」と「憧れ」
そして今回の主題は「子ども」と「大人」です。
面白いなと感じたのはこの比較している二つって対義語なのか同義語なのか難しいんですよね。
例えば
「好き」と「憧れ」なんかはパッと聞けば同義語に思えます。
ただ、
「好き」というのはその対象物がハッキリしている現実寄りの思想
「憧れ」はその対象の本質を掴みとることのできない、光り輝いているけどぼんやりしている理想寄りの思想
なんじゃないかと個人的には思いました。
うーん伝わりにくい(し、自分でも理解しきれていない)。
僕の拙い言葉で更なる説明を付け加えてみます。
僕は【星座】は【好き】です。星を結んだことにより一つの具象化された「対象物」として存在しています。
一方で【星】は【憧れ】なんです。ずっと見続けた時、キラキラしていて不変ではない。目指したいけど遥か彼方で想像がつかない。どこかに実在しているはずなのでしょうが、どちらかというと「概念」として存在しています。
対象物に対して抱くのが好きで、概念に対して抱くのが憧れ…なのかなぁ。
好きのほうが今を見据えていて、憧れのほうが未来を見据えている気も自分の中ではしています。
なにも論理的なことを言えていないですね…ごめんなさい。
もう少し腑に落ちる言葉が思いついたら更新するかもしれません。
もしこの部分を見てくださった方がいたとしたら拙いメモ書きを覗いてしまったくらいの気持ちでいてくださるとありがたいです。
はい。
そして「子ども」と「大人」に関して。
色々な人が数多の作品で取り上げている内容でしょう。
この本を読み進めているうちに河野裕さんは大人になるというのをどの結論に導くのか僕は楽しみで仕方ありませんでした。
「責任」をとる覚悟が出来たら
「やさしさの意味」が分かったら
世界を「諦め」たら
とかいう抽象的な言葉で彼にはまとめて欲しくないなぁと思っていたら、なんと
「歳が違う」p329
と来ましたね。
厳密にいうと何歳から!とかを本文で言っていないぶん抽象的っちゃ抽象的なのですが、いや、この作品はやっぱこうでないとと嬉しくなりました。
「それだけだよ。身体の大きさでも、知識の量でもない。大人と子供は、生きてきた時間が違う。乗り越えてきた夜の数が違う」
それは、身に受けている呪いの数だ。
ひとつひとつ、なにかを選んで、他を手放して、責任を背負って、後悔して、たまに納得して。そうやって身体中にまとわりついた重みの数だ。 p329
ここが!この本で一番心に残りました!。
やっぱり僕は河野節がたまらなく好きなんだなと思いました。
ほら、こんな定義をされちゃったからまた「子ども」と「大人」が対義語として括れなくなっちゃう。笑
それにしても、
乗り越えてきた夜の数が違う。
この乗り越えてきた夜一つ一つをすべて呪いと断言してしまう強さ(それとも弱さ?)ったらまったくもうといった感じです。
こうして僕はまだ純粋にこの世界観を愛したまま最終巻を読み始めることができます。
そのことがまず途方もなく嬉しく、しっかりとこの5冊目を書き上げてくれた河野さんに感謝をしたいです。ありがとうございます。
6冊目である最終巻への期待もここで勝手にさせて頂きたいと思っています。
あーーーとてもたのしみだーーーー