そして、バトンは渡された
「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ
(2018年2月 文藝春秋)
あらすじ
幼い頃に母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ優子。
その後も大人の都合に振り回され、高校生の今は二十歳しか離れていない“父”と暮らす。
血の繋がらない親の間をリレーされながらも、
出逢う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきた彼女自身が伴侶を持つとき――。
大絶賛の2019年本屋大賞受賞作。
解説・上白石萌音
<勝手にこんな人にオススメ>
○家族ってなにかを考えたい人
○環境は考え方次第だと思う人
○心をほっと温めたい人
久々の感想更新です。
最近も本はちょこちょこと読み進めていたのですが、
おもったことを文にしようとまでする気力が生まれず…
そのようななかで、今回の「そして、バトンは渡された」。
個人的に非常に好きな話でした。
なんといっても主人公が良いんです。
何度も親が変わって大変なこともあっただろうけども、
「困ったことに私は不幸ではない」という言葉。
これって本質を捉えているなと思いました。
周りから見た大変そうとか普通そんなんじゃ心休まらないよねって言葉はひどく身勝手なもので、結局その人の気持ちなんてその人にしか分からない。
自分がどう思うかというのが大切で、主人公の優子は困るほどの不都合は無かった。
それでよいと思うんです。
だから僕は、この本のレビューを読む中で、
「薄っぺらい話し」だというのがあってとっても驚きました。
一読者たちが、こういう設定だったらもっとこういう葛藤を抱え込まないとダメだろというような圧力を登場人物に加えている気がしたんです。
でも、どう思うかってその人次第だし、そういうことを思う登場人物がいたってことでいいじゃないかと僕は思います。
ということを書きつつ、でも確かにあのシーンはもっとこの子ならこう考えそうだよなとか、そういうのを考えちゃうのが、読者の傲慢なところですね笑
でも、良いんです。この本の本質は、そのところどころの場面ではなく全体の流れにあるとおもうので。
親が子を思う気持ち、子が親を思う気持ち。
それは必ずしも血のつながりである必要はなくて、
お互いがどのように向き合っているか。
やっぱり男手一つで優子の父親になった森宮さんがたまらなく好きです。
「そう。自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になるってことだよって。明日が二つにできるなんて、すごいと思わない?」 p315
こういう気持ちを子に抱ける大人って素敵です。
誰かから受け取ったバトンを丁寧に、次に渡せる存在になりたいと思いました。
文庫版は解説で上白石萌音さんが書かれているのですが、
すごく言葉選びや構成が素敵でファンになりました。
萌音さんも小説書かないかなぁ…ひそかな楽しみです…。