太陽のシズク
「太陽のシズク~大好きな君との最低で最高の12ヶ月~」三田千恵
あらすじ
死に至る「宝石病」を患う理奈は海の見える高校に転校してきた。不安と焦燥を抱えながらも、残された時間で「素晴らしい青春」を送らなければと頑張る彼女は、運命の恋人と無二の親友と出会う。一緒に過ごした最後の12ヵ月は、大切なことに気付いたかけがえのない日々だった……そして結末、秘密がすべて明かされるとき、物語は究極のハッピーエンドへ。2度読み必至の泣ける恋愛小説。
(2019年11月1日新潮文庫)
こんな人におすすめ
・高校生の純愛系好きな人
・命の期限とその過ごし方に関わる話が好きな人
・2度読んでしまう系の本が好きな人
誰かの置き忘れか、実験室に置いてあったので読んでしまいました。笑
久々に、こういう感動系!で売ってる系の本を読みました。僕は、そういう恋愛系や命の重み系は好きなので、サクサク楽しんで読めました。
この本を読んで良いなと思ったのその設定です。
死に至る「宝石病」…とだけ聞くと、そういう謎の奇病で悩まされてのありがちな話しに思うかもしれません。でも、ただの病気ってわけではないんです。
この宝石病は、心臓に腫瘍ができて、発症したら死に一直線の難病という説明がされています。死後、この腫瘍が摘出されるとまるで宝石のように美しいそうです。命の華ともいえるその宝石は、世界に数多ある宝石のなかでも1番美しく大変高価で貴重なものとされています。
そしてこの設定のスパイスとして良いなと思ったのが、この摘出された宝石にはその色や見た目に応じて“波のシズク”のような二つ名が付くそうです。実際、摘出した人が生前どのような生き方をしていたかによっても色味等は大きく異なっており、その人の全てが反映されているかもしれないとのことです。
物語の主人公理奈は、5人兄弟の長女です。幼少期に父が亡くなったことをきっかけとして家族はとても貧乏な暮らしを送っています。そこで理奈は、自分が最期の瞬間まで充実した人生を送れば、死後素敵な宝石を取り出すことができるので、それを売ったお金で家族に楽になってほしい、という気持ちを抱きます。
ただ、輝かしい日々を送れば送るほど死にたくないという気持ちが高まってきます。ここが理奈の葛藤にも繋がっていき秀逸な設定だなぁと思いました。
物語には、小説ならではの叙述トリックが仕掛けられており、そういうものがあるかもしれないということを事前に考えてたしても、ネタバラシされるまで気づきませんでした。
改めて読み返すと辻褄合っているし、すごいなぁと。ただの恋愛小説では終わらない楽しめる作品となっています。
最後に理奈にとっての親友で特別な存在である美里の素敵な一言があったので紹介させてください。
「理奈みたいに、自分の幸せを一番に考えた上で、人のことも想えるのが、本当の優しさなんだよ」p194