カフーを待ちわびて
「カフーを待ちわびて」原田マハ
(2008年5月26日宝島社)
あらすじ
もし絵馬の言葉が本当なら、私をあなたのお嫁さんにしてください―――。きっかけは絵馬に書いた願い事だった。「嫁に来ないか。」と書いた明青のもとに、神様が本当に花嫁を連れてきたのだ―――。沖縄の小さな島で繰り広げられる、やさしくて、あたたかくて、ちょっぴりせつない恋の話。選考委員から「自然とやさしい気持ちになれる作品」と絶賛された第1回『日本ラブストーリー大賞』受賞作品。」
こんな人におすすめ
・離島の生活に憧れのある人
・地元のあたたかい繋がりを感じたい人
・今の状況に甘んじてしまうけど、先に進みたい人
原田マハ作品は「本日は、お日柄も良く」に次いで2冊目です。
「本日は、お日柄も良く」は個人的大好きな本ランキング上位に入る作品なので、逆に原田マハさんの他の小説を読んで、失望してしまうのが少し怖い気持ちもあったのですが、全くの杞憂でした。
何が他の本と違うのか分からないのですが、原田マハさんの本は、どんどんどんどん読み進めたくなってしまう魔の引力があります。
きっと地の文のうまさとか登場人物の魅力とか言葉選びとかテンポ感とかいろいろな要素があるとは思うのですが、そんな理屈で納得できないくらいに惹きつけられます、、、不思議です。
以下ネタバレなしのあらすじです。
主人公の明青は沖縄の離島、与那喜島に暮らしています。
明青は幼いうちに父母と離別し、28歳まで育ててくれた祖母も死去した中、一人雑貨屋を営む典型的な島人です。朝起きて犬の散歩をし、日中は雑貨商を開き、閉店後に犬の散歩、夕方には裏の家に住むおばあが作ってくれた夕飯を食べ、定期的に夜に友人と酒盛りをする。そんな緩やかで優しい日々を送っています。
このおばあが大変魅力的な人なんですよね。御年86歳の現役巫女(ユタ)、無愛想だけど、神託や死者の道標を示したりして、島の皆から頼りにされている存在です。
そんな彼女からの良いことがあるよとお告げされた翌日に来たのが、明青の飼っている犬、カフーです。カフーという言葉には沖縄の方言で「いい報せ」と「幸せ」の2つの意味があります。果報、ということですねきっと。
そんな明青が、初めて県外の島に旅行した時、縁結びの神社の絵馬に誰に向けたわけでもなく書いた「嫁に来ないか」という言葉によって、若く美しい女性・幸はこの島に来ることを決意します。
天真爛漫な幸は、離島の環境に物怖じすることなく果敢に体当たりしていき、段々と島に馴染んでいきます。次第に明青は幸に対して心惹かれていきますが、両親との別離のトラウマを思い出すと、なかなか手を伸ばす事が出来ません。
幸せな日々を送る中で、
与那喜島のリゾート計画が持ち上がっており・・・
幸は何者なのかが分からないまま時は経ち・・・
と少しずつ暗雲が立ち込めていきます。
それらを踏まえた上で悩みや勘違い、すれ違いも乗り越え、自分にとっての大事なものを見つけていく、そんな物語です。
いやぁ、なんといっても、カフーがかわいいんですよ。ほんとに。
犬の描写が素敵で、あぁ分かる~みたいになるんですよね。ところどころこんな利口か??というところもありますが笑
ちょっとだけネタバレになりますが、この題名のカフーを待ちわびてというのは、『幸せを待ちわびる』という意味の他に、『犬のカヌーと再び過ごす幸せな日を夢見て』といった気持ちも込められている感じがしていて、素敵な題名だなぁと思いました。
読み終わった時に、あぁこの本はこの題名が一番しっくりくると思えるようなものがとても好きなので、そういった観点からも大変すばらしい作品でした。
これを皮切りに他の原田マハ作品も手を出してみたいと思います。