旅屋おかえり
「旅屋おかえり」原田マハ
(2014年9月25日集英社)
あらすじ
あなたの旅、代行します!
売れない崖っぷちアラサータレント“おかえり”こと丘えりか、スポンサーの名前を間違えて連呼したことが下人でテレビの旅番組を打ち切られた彼女が始めたのは、人の代わりに旅をする仕事だった―――。満開の桜を求めて秋田県角館へ、依頼人の姪を探して愛媛県内子町へ。おかえりは行く先々で出会った人々を笑顔に変えていく。感涙必至の“旅”物語。
こんな人におすすめ
・旅好きな人
・家族のような存在のあたたかさを感じたい人
・人生を前向きに臨みたい人
この本を読み終わった今、僕は旅行したくてしたくてたまらなくなっています。
なんて、旅をすることは美しいのか。初めて出会う風景、普段と違う食事、数多のイレギュラー、非日常の特別感、すべてが旅のスパイスとなります。
この本を読む中で、圧倒されてしまうのは主人公、おかえり(“丘えりか”)の旅への愛です。
圧倒というと暑苦しく遠慮してしまうところがあるかもしれませんが、そういう感覚にはなりません。彼女の旅への愛を聞くと、幼い子どもが今日一日の楽しかったことを報告してくれているかのような、あたたかい幸福感に満たされます。。
そして、おかえりを見守る人たちもまた家族のようにやさしく温かいのです。
旅番組の打ち切りという残酷な世界のなかで奮闘する彼女のまっすぐな姿を誰しもが応援していて、良き理解者となり支えてくれています。
原田マハさんの描く主人公は、どれも逆境の中でも輝き続け、その人の周りも美しく彩られるイメージです。人間として目指したい真摯な姿が詰まっているにもかかわらず、しっかり悩んだりして人間くさいところもあったり。そういうところも含めて魅力的だなと思います。
昨今では、撮影技術の進化とVRを用いたテクノロジーの普及もあり、旅行に行かなくてもそこに行った気持ちになれるコンテンツが幅を利かせ始めました。
そうなるとわざわざ高い金を払って景色の確認をしに行くのが勿体ないというか、そういう気持ちに駆られていた節が少しあります。
でも、この本を読んで旅っていうのは、単に目的地に行くことを指すのではなく、わくわくした『いってきます』から楽しかったの『ただいま』を言う全ての流れを指すのではないかと思うようになりました。
そこには素敵な人との出会いや道中のアクシデントも勿論含まれています。
きっと人の旅をしたいという気持ちは技術の進歩があっても、まだまだ底が見えないなと思います。
良い旅行をするとホクホクした気持ちになりますし、その想いを誰かに繋いで還元していきたい。
まだ見ぬ世界にこんにちはしていきたい。
旅ってこんなに楽しみなものなんだ、そう改めて気付かせたくれた本書には感謝です。
自分の旅もそうですけど、誰かにとってのおかえりという言葉を渡せるようなそんな人になりたいです。
この本を皆が読めば、平和な世界になるのになぁ。