想い出のおもちゃ箱

本を読んだ感想や、ふと思ったことを書いてくブログです。自分の想いの整理や置いとく場所として使いますが、皆にも手を取って見てもらえたらすごく嬉しいです。感想もオススメも是非是非お待ちしてます。

かがみの孤城

かがみの孤城辻村深月

(2017年5月 ポプラ社)

 

<https://www.amazon.co.jp/%E3%81%8B%E3%81%8C%E3%81%BF%E3%81%AE%E5%AD%A4%E5%9F%8E-%E8%BE%BB%E6%9D%91-%E6%B7%B1%E6%9C%88/dp/4591153320>

 

あらすじ

あなたを、助けたい。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。 

 

 

こんな人におすすめ

不登校やどうしようもない孤独を経験したことがある人

・一歩踏み出す勇気が欲しい人

・心あたたまるミステリーを読みたい人

 

 

読もう読もうと思っていた本作品。とうとう文庫版が出るのを待ちきれず買ってしまいました。読みたくなったきっかけは沢山あるのですが、その一つに下をご覧ください。

 

【歴代本屋大賞一位】

2020年(432点):『流浪の月』凪良ゆう 

2019年(435点):『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ

2018年(651点):『かがみの孤城辻村深月

2017年(378.5点):『蜜蜂と遠雷恩田陸

2016年(372点):『羊と鋼の森』宮下奈都

2015年(383点):『鹿の王』上橋菜穂子

 

読書通の方々には有名な話になってしまうかもしれませんが、そう、この作品。本屋大賞一位を取っているのですが、歴代の中でも最高得点なんです。

僕は、蜜蜂と遠雷羊と鋼の森が大好きなんですが、それを圧倒的に上回る点数・・・!

こんなの読んでみたくもなってしまいます!笑

 

最初に結論を述べますと、いや、さすがは本屋大賞一位。

期待を裏切らない、全体の構成力や登場人物の内面を繊細に描く文章力。

読後、ああ良い物語に触れた…という感触を得ました。

 

 

評判が良いというだけで、あらすじも知らず買ってしまったので、読み始めて驚きました。

わ、案外キャッチ―?なお話なんだと。

 

タイトルの雰囲気からもうすこし堅い物語をイメージしていたのですが、決してそんなことない。ネタバレにならないようざっくりと概要を言いますね。

 

――

物語の主人公、中学一年生のこころは新学期早々ある出来事が原因で不登校になってしまった。

なんとかしないとという焦燥感を抱えるが、自分自身どうすれば良いのか分からない。親からの視線にも苦しさを感じ、塞ぎ込む生活を送っていた。

ある日、自分の部屋の鏡が光だす。鏡は城に通じており、自分を含め7人の歳の違う中学生が集められていた。オオカミの仮面を被った謎の少女からこの城のルールが告げられる。

①9~17時の間だけ各々の家の鏡からこの城に自由に行き来出来る

②17時を過ぎた段階で誰か一人でもその城に居た場合、その日に来た全員が連帯責任でオオカミに食べられてしまう

③この城の中にある鍵を探し出して“願いの部屋”に入ることが出来た1名だけが何でも願いをかなえることが出来る

④誰かが願いの部屋に入る、または来年の3月30日をもってこの城には永久に来ることが出来なくなる

 

集められた7人は徐々に城に居つくようになり親睦を深める。

度々起こる問題。段々と明らかになっていく謎。ルール。否応なく進む現実世界の出来事。

7人が、それぞれ思惑をもってゆっくりと一歩ずつ行動していく。

――

 

といったところですね。各章が「五月」「六月」…と月ごとに時系列を追っていくので煩わしさなく読める作品となっていると思います。

 

僕がこの本ですごいと思ったのは、辻村さんの描く心理描写です。

主人公のこころを始め多くの人物の心情の機微が非常に巧みな文章で表現されています。

ただ、悲しかった、辛かったとかではなくて、感情を丁寧にゆっくりと紐解いていかないと生むことの出来ない言葉がそこにはあるように感じました。

似たような経験をしたことがある人は、あの時自分が抱えていた気持ちを言葉に表すとこうなるのかと唸ってしまうでしょう。

それだけ、登場人物一人一人の心に向き合っているからこそ、この作品には瑞々しさというものがあるのだと思います。

 

中学生ならではの幼さ、もどかしさ、諦観、どうしようもなさ、振り絞った勇気を描いているといったら、少しだけ不適切かもしれません。だって、この登場人物それぞれの悩みは違うのだから、一つに括ってしまうのは大変失礼な話です。

でも、今の僕の持ちうる言葉では、彼女たちらしさを描いた物語だと、そうとしか説明できない。それがなんとももどかしいです。

この子たちは、「生きている」。一人一人がしっかりと「生きている」。それはキャラが立っているから、とかそういう技巧的なところとは別の次元でそう思いました。

 

 

正直、ストーリーの展開としては、予想だにもしなかった…というと嘘になってしまいます。

きっと、いくつかの作品に触れたことがある人は、読み進める中で、あぁきっとこういうことなんだろうなということに気付いてしまうと思います。

ただ、だからと言ってすべてが予想通りだったとはならないでしょう。

あぁこれは気付けなかったとか、こういうことだったのかと読み終えて初めて分かるところが沢山あると思います。それがまた心を温かく揺さぶるのです。

この物語の主人公はこころだと書きましたが、読み終わった今、誰もが主人公だったようにも感じます。

 

これを読んで皆さんは何を感じるのでしょう。

僕は改めて、人って不器用だな、と思いました。

ただ、その不器用さもまとめて愛していきたくなる。そんな気持ちをこの本から教わった気がします。

 

こじょう【孤城】

①ただ一つだけぽつんと立っている城。

②敵軍に囲まれ、援軍の来るあてもない城。

大辞林

 

 

鏡は、自らを映し出し、向き合うもの。

 

読み終えてみて、この物語のタイトルはこれしか無かった。そのように思います。