占い処・陽仙道の統計科学
「占い処・陽仙道の統計科学」二宮敦人
(2015年10月25日 角川書店)
<https://www.amazon.co.jp/dp/B016VNDO98/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1>
あらすじ
「生年月日と人生の相関性を対象とする数千年規模の数理解析―――それが四柱推命。つまり、統計科学です」。11年前に行方不明になった妹を捜し続ける喜一は、すべての手掛かりを失い、藁にもすがる思いで評判の占い師を頼る。白衣を纏った大学院生の彼女は、生年月日から運命を占う「四柱推命」で失踪した妹を占うと、鑑定結果を手掛かりにその足跡をたどり始めるのだが―――。占いと謎解きが融合した、新感覚ミステリ!!」
こんな人にオススメ
〇占い(四柱推命)を入門的に知りたい人
〇鮮やかなミステリが読みたい人
〇知への探求心がある人
二宮敦人さんの本は、「最後の医者は桜を見上げて君を思う」シリーズしか知らなかったのでこういう小説を書くのかとびっくりしました。
なんでもできてしまうのですね・・・。
でも、二宮さんが書いていると分かってから読むと確かに、文の表現とか話の持って生き方が「最後の医者は~」に通ずるところがあるなぁと思って楽しませてもらいました!
初めて占いを基点とする小説を読んだ気がします。
僕も占いには興味があり独学で手相を勉強しているので、普通に読んでいて勉強になりました。
ただ、同じ大きな「占い」という括りで合っても本書のメインフォーカスは、四柱推命です。
四柱推命とは何かいうと
人が生まれた年、月、日、時間の4つが分かればその人の人生が分かる、というものです。
いやいやいやいや、となるのも分かります。たった4つの情報だけで個人の長い人生を決めつけることなんてできなくない?と。
これに関して、本文中では初期位置と法則性の話を例に用いています。物理と一緒なんですよ~と。
例えば、物体をある高さから落としたとき、我々はどこから落としたという初期位置と、重力加速度などの外環境が及ぼす影響の法則性を知っていれば、いつ地面にぶつかるのか分かります。
それと同じでヒトが生まれた瞬間の初期位置さえ知っておけば、いつどうなるのかがある程度の予測がつくということです。
勿論法則性に関しては未だ不明な部分も多く、膨大なヒトの歴史から生まれた経験科学的要素(つまり原理は分からんけど多くの場合当てはまるから適用しちゃおうぜって感じ)が大きいようです。
でも、全身麻酔注射が詳細な原理が分かっていないけど使われていたり、機械学習が内構造は分からないけど正確な結果を出力するのと一緒で、人は結局原理よりもそのアウトプットが合っていれば納得してきた生き物なのです。なので占いの原理が分かっていないと固執してうだうだ文句をつけて結果を見ないのは、少し違うなと改めて思わされました。
他にも、占いが今の日本の言語にどういう影響を与えてきたかという話が随所であるので、雑学として面白く楽しめました。「還暦」や上旬下旬の「旬」が四柱推命に用いる干支から生まれた言葉であるという話や、桃太郎に出てくる猿・雉・犬は、干支で言う申・酉・戌(それも干支的に西の方角を示す)と対応しているのではという考察は大変興味深いです。
僕が手相を好きな理由としては、形のあるものには意味が存在し吉凶を示すため表象(つまり手のひら)に具現化する、かつ、それらが持つ意味は移ろいゆくものであるため同様に変化する(つまり手相は変わる)ところで自身で運命を変えていける感があるところです。
ただ、この小説を読んで大きな渦の中で人がどのような変遷をたどるのか知っておくのは面白いと思ったので、四柱推命やタロットカードなどにも手をそのうち出したくなりました。
あ、占い師は結構一人でいろんな占いをできる人が多いらしいです。
それは医師が、問診して、レントゲン取って、MRIとって、血液取ってとデータを多数集めて診断するように、占いも複数用いて多面的に見たほうが正確な判断をできるからだそうです。
勿論、ヤブ医者がいるようにデータをとっても判断する力をもっていないヤブ占い師もいるということをお忘れなく。
どうしても僕自身が占いに興味があるため中立的な文章は書けないのですが、もしこういうのを面白半分でも信じてみたいという人には、この本を読んで納得してもらえることが多々あると思うので是非オススメしたいです~。