想い出のおもちゃ箱

本を読んだ感想や、ふと思ったことを書いてくブログです。自分の想いの整理や置いとく場所として使いますが、皆にも手を取って見てもらえたらすごく嬉しいです。感想もオススメも是非是非お待ちしてます。

ペンギンは空を見上げる

「ペンギンは空を見上げる」 八重野 統摩  [å«éé çµ±æ©]ã®ãã³ã®ã³ã¯ç©ºãè¦ä¸ãã (ãã¹ããªã»ãã­ã³ãã£ã¢)

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あらすじ

"将来NASAのエンジニアになりたい小学六年生の佐倉ハルくんは、風船宇宙撮影を目指しています。できる限り大人の力を借りず、自分だけの力で。そんなことくらいできないようでは、NASAのエンジニアになんて到底なれないから、と。意地っ張りな性格もあってクラスでは孤立、家に帰っても両親とぎくしゃくし、それでもひたすらひとりで壮大な目標と向き合い続けるハルくんの前にある日、金髪の転校生の女の子が現れて……。ハルくんの、夢と努力の物語。奮闘するこの少年を、きっと応援したくなるはずです――読み終えたあとは、もっと。"

 

 

 

やられたと思った。

読後にもういちど読みたくなってしまう作品を書くことが出来るのはこの作者の魅力であり、それに今度もしっかり乗っかってしまった形です。

もう一度読みたいと読後の瞬間に思わせるテクニックを使えるのってすごいと思います。だって、それって、人の行動に影響を与えているということですからね。

「文字で人を変える」ことができるのって表現者の真骨頂だと思います。

 

 

さて、当作品は僕が独力で見つけたものでなく、しゆんさん(http://shiyunn.hatenablog.com/)からありがたいことにオススメしてもらったものです。

この場を借りてしゆんさんには改めて感謝を述べさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

 

 

八重野さんの前著、「終わりの志穂さんは優しすぎるから」は個人的にとても好きな空気感でした。その感想もいずれ書く機会があれば、と思っているのですが、簡潔にいうと彼の作品の魅力は「おしい青春」だと考えています。

 

この「おしい」というのは勿論作者の表現力が云々というわけではなく、「青春として誰もが憧れるものとは少し違うけど、なぜか良いなと思ってしまう」という意味です。

 

もう少しかみ砕くと、ストレートにパッと考えてみてそこまで羨ましいとは思わないし他人事のように感じてしまうけど、しっかり考えると構成している世界の一つ一つに優しさが見つかり、あぁいいなと思ってしまう。

そんなイメージです。

 

 

ただ、前作、「終わりの~」は僕のお気に入りの本の一冊となっているのですが一つだけ納得していないところ?があります。それは題名です。

実はこの作品初期段階では題名が「森だけが生きている」だったそうです。素晴らしすぎるセンスです。

題名が変わってしまったのは、きっと大人の事情でキャッチ―なのにしたほうが良いという力が働いたのかもしれないと勝手に考えています。が、個人的には旧題のほうが良かったなあなんて思ったり。

でも「終わりの~」って題名だからこそ自分は手を取ったのかもしれないからそこはホントに難しいとこだなぁとも思いました。

 

 

 

さて、下地を整えたのでここから「ペンギンは空を見上げる」の話に戻ります。

  

 

本を手に取って読み始めた最初のほうの感想は、正直言って、「久々にラノベ感あるものを読んでるなぁ」ということでした。

ラノベ自体は大好きで昔から何百冊と読んでいます。

ただ、ラノベ主人公特有の「やれやれ」的な語り口調をする系のやつは最近苦手になってしまいここしばらく遠慮するようにしていました。

 

 

そういう意味で言うと、この小説の主人公の語り口調、小6なのにすかしている感は、相容れるタイプではなかったです。

 

初期設定としても、

ハル(主人公):周囲と仲良くする気のない、友達少ない系男子

三好(ヒロイン1):唯一主人公に構う元気系幼馴染

イリス(ヒロイン2):転校してきた外国人美少女

 

という、まぁ、なんというか、ありがちなものでした。

 

それでも読み進めていくなかでいいなと感じていたのは主人公の、宇宙に対する想いとそのストイックさです。

 

宇宙、好きなんですよね。

うん、その、なんというか、僕、宇宙好きなんです。(二回言う)

 

 

僕が、宇宙に対して憧れを抱くようになったのは「秒速5センチメートル」を始めとする新海誠さんの作品に出会うことが出来たからです。

宇宙って可能性しかないし、人間の挑戦の歴史がたっくさん詰まったロマンの塊なんです!

ふと夜空を見上げて輝いている星々が、何万年前からのメッセージを届けていると思うとワクワクするし、

無限かのように広がる暗闇の中、自分はここにいるぞと光り続ける姿をみると勇気をもらえるんですよね。

 

 

だからこそ、宇宙に想いを馳せる(もっと複雑な感情みたいだけど)主人公の気持ちはすごく応援したくなるものでした。

 

 

 

また、僕が良いなと思ったのは、終盤のハルの想いです。

 

ハルは、ロケットを飛ばしてイリスに言葉を届けたい。ただ、言葉を届けるためだけに30万円もするロケットを飛ばすって、絶対周りから理解を得ることは容易ではないんです。だからこそ、ハルは自分自身と、そしてイリスと向き合って、なぜロケットを飛ばさなくてはならないか考えます。

それでたどり着いた答えが「バリアを破る」ためでした。

 

うお、って思いました。

普通、そんなぴったしの言葉出てくる?って。

 

もう、正直ここらへんは若干震えながら読んでいた気がします。

それだけ「バリアを破る」という言葉は腑に落ちたし、探すのを諦めていたピースが見つかって見事にはめこまれたかのような感動が自分の中ではありました。

 

こういうのが本の魅力なんですよね。読みながら感じる言葉に出来ない想いを、登場人物たちに美しい言葉で紡がれること。悔しくもあり感謝もしたくなる。うん、本を読む醍醐味です。笑

 

 

そして言葉の話になったので、極めつけに題名の話を。

 

 

「ペンギンは空を見上げる」

 

たぶん本を読み進めても、秘密を知るまでこの題名の意味は分からないでしょう。

しかも本文中にペンギンという単語は一回しか出てきません。

 

ただ、最後に全て理解するんです。

 

なぜ、ペンギンなのか。

なぜ、空を見上げるのか。

なぜ、ただ見上げるだけしかできないのか。

 

 

画竜点睛とはこういうことをいうんだと思います。

きっとこの作品は、この題名を得て初めて完成したに違いない。

ブラボーです。

 

 

…書いていたら、思いが高ぶってきたので、もう一度読み返してきます。笑