想い出のおもちゃ箱

本を読んだ感想や、ふと思ったことを書いてくブログです。自分の想いの整理や置いとく場所として使いますが、皆にも手を取って見てもらえたらすごく嬉しいです。感想もオススメも是非是非お待ちしてます。

おくりびと

おくりびと百瀬しのぶ

<https://www.amazon.co.jp/%E3%81%8A%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%81%B3%E3%81%A8-%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E9%A4%A8%E6%96%87%E5%BA%AB-%E7%99%BE%E7%80%AC-%E3%81%97%E3%81%AE%E3%81%B6/dp/4094082840/ref=pd_lpo_sbs_14_img_0?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=YFEEJ3ZBS1HE8BYZ12N9>

 

あらすじ

「こりゃ誤植だ。旅のお手伝いじゃなくて“安らかな旅立ちのお手伝い”だから、うちは」

 小林大悟が求人広告を手にNKエージェントを訪れると、社長の佐々木から思いもよらない業務内容を告げられた。NKは「納棺」―遺体を棺に納める仕事を、大悟は妻の美香に打ち明けられなかった。

 戸惑いながらも働き始めた大悟は、佐々木の納棺師としての真摯な姿勢を目の当たりにする。様々な境遇の死や別れと向き合ううちに、この職業の矜持が大悟の心に芽生えていくのだが…。人の生と死をユーモアと感動で描き、笑って泣いたあとには大きな愛が胸に届く物語。

 

<勝手にこんな人におすすめ>

○自分の仕事等が他人から理解されがたい人

○身近な人に死について思うことがある人

 

 

 

この本は同タイトルで滝田洋二郎監督のもと、本木雅弘広末涼子を主演に据え制作され2008年に公開された映画のノベライズ版です。

映画としての評価は国内・国際問わず高く、第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞、第81回アカデミー賞外国語映画賞などを始め数多くの受賞をしたことで一躍話題となりました。

 

映画としての当作品は、主演の本木雅弘青木新門著の「納棺夫日記」から感銘を受け、作者本人に実写化を希望したものの、諸理由によって「全く別の作品としてなら良い」という話で製作されたものだそうです。

本木氏本人も複数回青木さんのところへ伺っているようですし、主演の人が企画持ち込みでここまで大きなスケールになるってすごいですね。

 

また、ノベライズ版を手掛けているの数多くの実写作品を書籍化している百瀬しのぶさんです。

 

 

話題の作品ということもあり、僕自身いつか絶対映画を観ようと思ってたのですがいつのまにか10年の月日が経っていました。書店でたまたま見つけて折角ならと購入したものの、先にノベライズのほうから読むことになるとは思ってませんでした。

 

納棺師という職業をこの作品を機に知った方も多いそうです。

納棺師とは、葬儀社からの依頼のもと、遺体の見栄えを整え、火葬まで状態管理する仕事です。なんとなく遺体を脱脂綿で拭いたり化粧を施す人という印象があるかもしれませんがまさにそういった通りの仕事を行っているそうです。

 

 

 

生について、死について、たぶん人間一度は考えると思います。

なので、十人十色の考え方があって良いのですが、この本では亡くなるということは“安らかな旅立ち”であり、納棺師はそのお手伝いをする仕事として表現しています。

僕は、その表現を聞いて、なんとも優しい気持ちになりました。

 

今生きている人が、もう動かない死んだ人を気に掛けるのって、動物の生存戦略的には無意味だと思うんです。でも、人は、死者に対して最大限の礼儀をもって接し、感謝を伝え、涙する。

勿論、悲しさに満ち溢れた場かもしれません。でも、それ以上に何て安らかで荘厳で尊い時間なのだろうとも思います。

 

この作品の英題は「Departures」だそうです。

だから、この世界に残された僕らが故人にしていることは、少しだけ手の込んだいってらっしゃいなのかなと感じました。

 

 

さて、以下に本文内で考えさせられた表現を2点ほど。

 

一つ目は、先輩納棺師の佐々木が、故人への薄化粧を終え棺に納めた場面です。遺族は最後に棺に置かれた故人と向き合いお別れをします。

「これで納棺を終了とさせていただきます」

蓋の小窓を閉め、佐々木がきっぱりと告げる。

大悟にはまだこんなふうに小窓を閉めるタイミングがうまくはかれない。遺された者たちと、故人とを隔ててしまう瞬間を、自分の権限で推し量っていいものだろうかと、考えすぎてしまう。

この、場面一つを切り取っただけでも納棺師という職業がどれだけの重役を担っているかが分かります。

こういうタイミングはきっと杓子定規で計れるものではないですからね。生と死を分かつ門番の、本当に偉大なお仕事の一つがこのような些細なところにまで溢れているんだなと思いました。

 

 

 

そして二つ目。

これは主人公の大悟が初めてNKエージェントの事務所に行き部屋にたてかけてある3つの棺を見る場面です。事務員の百合子はこの3つの棺がそれぞれ5万、10万、30万円である違いについて説明します。

「右のは合板で、次が総檜の窓付き。高いのには彫刻が入っているでしょう?」

「素材と飾りの違いだけですか?」

「そう。燃え方もおんなじ。灰もおんなじ。人生最後の買い物は、他人が決めるのよ。」

この「人生最後の買い物は、他人が決めるのよ」というフレーズですよ。

自分の旅立ちの船は他者に任せるってことです。死者からしたら一番安いやつで良いと思う人が多いかもしれませんが、実際に残された人としては良いものを買ってあげたくなるんでしょうね…。

 

日本人なんか特に宗教や死生観についてきっと人によって様々だし、オカルト的なことも信じている人は多いわけではない国な気がしますがこういうときだけやっぱり良いのを買って最後見送ってあげたいとか思ってしまうんでしょうねぇ。

残された側としては、棺の違いが意味ないかもしれないのは分かっているけど、してあげたいのだから好きにさせて的な。こういうのってただの自己満足かもしれないけどそれよりもなんか高貴な(そして厄介な?)自己満足だなと感じました。

 

 

 

死んでなおDeparturesなのだから、人の旅は終わることない。

…少しだけハードワークな気がしないでもないですけどね。笑